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マグロ散ル、水蒸気の朝に。

原発牛乳がマグロとは特に関係の無い話をたまに書きます。

こわい夢を見た日


場所は昔住んでいた、九州の離島にある母の実家。
その家はとても広くて、部屋が1階と2階合わせて9つある。
廊下には緑色の絨毯が敷かれ、玄関も重厚だ。
倉庫兼車庫もやたらでかい。
その家に母方の祖父母は住んでいて、祖母が亡くなってからは私も母と祖父の3人で住んだ。
小6から中3の半ばまで、約3年半。
この立派な家には祖父の死後誰も住んでおらず、白蟻に食われてボロボロだと聞く。
そんな廃墟となってしまった家は私の人格形成期にとても大きく影響を与えたらしく、未だに夢に出てくる。

昨日見た夢。
私は2階の、母の部屋にいる。
母の部屋は6畳が2間繋がっていて、屋根裏に続く扉がある。
その部屋の片方で私は母の荷物を整理している。
夢の中で母はいつの間にかいなくなってしまって、母の代わりなのか、私にはいない兄が出てくる(金髪)。
私はいなくなってしまった母の部屋でずっと片付けをしているのだけど、夜が近付くにつれ辺りはだんだん暗くなり始める。
電気をつけ、夜中になっても作業を続けていたが、この部屋にはカーテンがない。
カーテンがないということは外から丸見えである。
夜は特に。
そこで私は電気を消して真っ暗な中で作業を再開するのだが、島には外灯が殆ど無いため外から入る光も無い。
手探りで、手当たり次第に荷物をゴミ袋に詰めていく。
その中で母の携帯電話を見つけた。
電源は入っている。
しかし、その数時間前、私は母と通話していた。
「もう少ししたら帰るから」
その「もう少し」が数時間なのか、数日なのか、数ヶ月なのか数年なのか、私にはわからない。
その時の私は笑っていた。
番号は間違いなく母のものだった。
ならばなぜここに母の携帯電話はあるのだろう。
疑問に思った私は母の部屋を出て、隣にある自分の部屋の戸を開けた。8畳弱のフローリング。
ベッドと机とテレビ、タンス、真ん中にテーブル。
ベッドの中には実在しない兄が寝ていた。
「お母さんどこ行ったのかな?帰って来ないけど」
「さあ……」
寝ているところを起こされた兄は面倒臭そうに答える。
テレビからは深夜のバラエティ番組。
作りものの笑い声。
兄は「もう寝たら」と言うが、私はそれを無視して部屋を出る。

階段を降りると玄関が見える。
家中の窓が少しずつ開いている。
玄関の戸は網戸になっていて、猫1匹くらい通れる程度開いていた。
そこから見える景色は今まで目にしていた景色は違って、大きな穴が開き、電信柱が玄関に向かって倒れて来ている。
外はうっすらと明るい。
夜が明けたのか、それとも別の光で明るいのかわからないまま、私はゆっくりと階段を降りる。

廊下の突き当たりがトイレ、その手前には洋風の客間がある。
いつもその前を通ってトイレに行くのだが、夜中の客間は真っ暗でぽっかりと穴が開いているようで、とても怖かったのを覚えている。
その客間の前を通ったとき、見てはいけないと思いつつもつい中を覗いてしまった私は即座に後悔した。
テーブルの上、ソファの上に積み上げられた沢山の猫の死骸。
その中には現在の飼い猫も、かつて飼っていた猫もバラバラにされた状態でいる。
私はただ「ああ…」と思う。
諦めというか、有る程度その状況を予想していたかのように。

そして客間を過ぎた私はトイレに入った。
トイレットペーパーの代わりに巻きつけられていたのは平べったくなった猫の胴体だった。
私はその下にあるペーパーを取り出そうと躍起になるけれど、猫の皮はほんのりあたたかく血でぬめっているためなかなか取り出せない。
仕方なく私はトイレを出ようとするが、廊下からこちらに向かって摺り足のような、ズル……ズル……という音が聞こえる。
何となく、これは兄の足音ではないと思う。
どうしよう、私も猫たちのように殺されてしまうのだろうか。
そう思い固まっていると、トイレのドアの隙間に黒い血のついた鉈がするりと入ってくる。
ああもう終わりだ……
ところでこれは誰だろう……

というところで目が覚め、眠れなくなった私は一旦起き上がりトイレに行って、娘のふとんに潜り込んだ。
体温さえあればまた眠れるような気がしていたけれど、次に見た夢はまた同じ家の夢だった。

時間は明け方、私は娘と2人でまた母の部屋にいる。
布団に2人で横になり、他愛もない話をしていると階段をのぼってくる足音が聞こえる。
部屋の戸を開けると、そこには死んだ祖父がゾンビみたいな姿で立っている。
そして「ズボンはどこだ?」と聞く。
私は足元に転がっていた黒いズボンを祖父に渡し、階段を降りる姿を見届けるとまた布団に入る。
そしてまた朝が来る
再び聞こえる足音。
戸を開けると更に凄まじい姿になったゾンビじいさんがいる。
「金をくれ」と言われたので、「今いくらあるの?」と聞く。
返ってきたのは「5万4千円」という言葉。
金あるじゃん!
めっちゃ持ってんじゃん!
この糞みたいな田舎でそんな大金持ってどうすんの!
何につかうの!
寧ろつかえないでしょ!
と思いつつ、財布から5千円札を取り出し「少ないけど…」と渡す(健気だなー)。
そしてまた布団に戻り、朝が来る。

それを何度か繰り返して、娘が「お腹すいた」と言い始める。
2人で台所に向かうと、玄関の前はまだ大きな穴が開いたままだった。
それを見て見ぬふりをしながら客間とは反対方向にある台所に行くと、炊飯器の中の米が腐ってドロドロになっている。
食べられそうなものは何もない。
そして勝手口からゾンビじいさんが入ってきて「腹が減った」と言う。
私はどうすることも出来ずに立ち尽くす。

そして再び目を覚ますと朝6時だった。
隣で寝ている娘も起きたようで、「朝ごはん何でもいいよ」などと言っている。
私はこの昔住んでいた家の夢2本立てにより殆ど寝た気がせず、今日一日をぼんやりしたまま過ごした。

文字に書き起こしてみると大して怖くもないけれど、夢の中で嗅いだ血の匂いや音がとてもリアルで、すごく気持ち悪かった。
でも起きた瞬間「これはネタになる」「これで小説書きます神様ありがとう」とも思ってしまった。

今日はちゃんと寝られますように。